儲けは一億あまりなのに、課税金額は5億7000万円とは実に理不尽な判決であることは、少なくとも法律の素人のだれでも感じることです。
実際の判決が出ると、案の定実際の判決(最後に引用)はそれを覆して、「外れ馬券は経費」と認定し、所得を約1億6千万円、脱税額を約5200万円と認定したようです。
これで、大阪国税局、いや国税局は偉い恥をかいたことになります。
商売のことであれば、1万円の売り上げに対して、まんまと課税するようなものだったです。だとすると、マージンはどれだけ積めばいいでしょうか。
一個人が競馬で儲けた所得を申告せず、約5億7000万円を脱税したというニュースが先日報じられ、世間を驚かせた。所得税法違反罪で起訴された被告の男性の儲けは1億円余り。だが、それを稼ぎ出すために28億円もの馬券を買っており、「外れ馬券が経費に算定されていない」とし、法解釈に誤りがあるとして無罪を訴えている。審理の成り行きが注目されるが、今回の裁判ははからずも、(1)競馬で確実に利益を上げている人物が実際にいる(2)厳格に法適用した場合、そうした人物でさえ利益が吹っ飛び、競馬は構造的に勝てない仕組みになっているーなど、興味深い事実や問題点も明らかにした。(田中恵一)
外れ馬券は経費か否か
被告は大阪市の会社員の男性(39)で、平成21年までの3年間で計約28億7000万円分の馬券を購入。約30億1000万円の払い戻しを受け、約1億4000万円の利益を得たという。
大阪国税局はこの払い戻し金を一時所得と判断し、的中馬券の購入費を除いた“儲け”に対する脱税額を約5億7000万円と算定。大阪国税局から告発を受けた大阪地検が所得税法違反の罪で大阪地裁に起訴した。男性は無申告加算税を含む6億円余りを追徴課税されたとみられる。
これに対し、男性側は11月の初公判で「外れ馬券も経費。そこまで所得を得ておらず、不当だ」と反論し、無罪を主張。裁判は12月10日に結審する。
所得税法を杓子定規に解釈すれば、「収入の発生に直接要した金額」だけが必要経費として認められる。馬券を幾らたくさん買おうと、的中した馬券の購入部分だけが経費で、外れ馬券は所得の形成に無関係とみなされるのだ。
一方、男性側の主張は一時所得でなく、「総収入から経費を控除した金額」と規定される雑所得だというもの。競馬は確率の世界。購入馬券を100発100中で当てるなんてことはできない。必然的に多くのレースで多くの馬券を買った中から、何枚かを当てるということになる。ある程度外すことも織り込んで投資し、トータルで利益を上げるという考え方だ。これが「外れ馬券も経費」、「収入は雑所得」という主張の根拠でもある。
さて、どうだろう。法律を厳格に当てはめる国税局にたてつくつもりはないが、現実に1億円ちょっとしかフトコロに入っていない男性に、その4倍超の税金を課すのは気の毒じゃないか?
株取引などでは儲けから損失を引いた分にしか課税されない。国税庁のHPには「上場株式を売却したことにより生じた損失は、確定申告により配当所得と損益通算ができ、控除しきれない損失については、翌年以降3年間にわたり配当所得から繰越控除することができる」とある。
馬券をめぐる環境とはあまりに対照的。ギャンブルはまっとうな経済行為ではない-と言われればそれまでだが、個人で儲けた馬券にはあまりに冷淡じゃないか。庶民感覚でいうならそうなる。
競馬は勝てない仕組み?
今回の裁判では、綿密なデータ分析や膨大な投資資金の運用などから、競馬には確実に「勝つ法則」があり、個人の技術や努力次第で億単位の利益を上げることができるという事実も明るみに出た。
男性の“腕前”も存分に知れ渡った。レース数を絞り、銀行レースなど危険度を避け、大量に投資すれば、一般馬券ファンよりヒット率がアップするのは当たり前。億単位の資本の裏打ちで、プラス計上は難しくないと経験的に分かるが、(実収入はさておき)3年で30億円超の払い戻しを受けるスキルは並ではない。競馬予想ソフトと過去戦績分析から編み出したという「独自の馬券術」に心惹かれるファンは少なくないはずだ。
ネームバリューを前面に予想会社を開けば、盛況間違いなし。個人的にも予想を買ってみたい。
だが、今回のように厳密に法適用されて課税されれば、儲けはすべて吹っ飛ぶどころかマイナスになる。つまりファンはどんなデータ、技術、ソフトを使って利益を出しても税金でもって行かれ、結局は儲けることはできない、となる。
GIレースなどをCMなどであれほど宣伝していて、何か矛盾しているようだが、外れ馬券が経費と認められない限りはそうだ。ファンに夢を売るはずの競馬なのに、何人も絶対利益を出せないとは、当たり券のないくじ引きみたいなもので、構造的に問題だとはいえないか。
ほとんどいない納税者
ただ一般の馬券ファンで現実に納税している人はほとんどいないと思われる。売り場で勝ち馬投票券の現物を手にし払い戻しを現金で受け取ったなら、税務署はまず把握できない。正直に翌春の確定申告に書き込むお人好しはまずいない。
最近主流になってきたネット投票なら、銀行口座に出入金の記録が残り“足”がつきやすいが、口座を預かる銀行なりが国税局に顧客の個人情報を漏らすケースはほぼないし、胴元のJRAから情報流出することもない。
つまり、名目上納税の義務はあるものの、実際に行われていない。今回のように脱税に問われるケースもなかったのだ。
もっとも、ファンの多くが幾分後ろめたい気持ちでいるのも確か。スポーツ紙の予想記者などが自らの大穴的中の金額をぼやかして書くのはそのため。が、今回、男性側の主張が認められれば、ファンがおおっぴらに払い戻しを公開できる動きが進むに違いない。刑事裁判でもあり、男性側に肩入れするわけではないが、外れ馬券を経費に認めてというのはファンの本音でもある。
産経新聞 5月23日(木)11時15分配信
競馬で稼いだ所得をいっさい申告せず、平成21年までの3年間で所得税計約5億7千万円を脱税したとして、所得税法違反罪に問われた元会社員の男性被告(39)の判決公判が23日、大阪地裁で開かれ、西田真基裁判長は懲役2カ月、執行猶予2年(求刑懲役1年)を言い渡した。公判の最大の争点となった「外れ馬券の購入費が経費にあたるかどうか」については、男性の得た競馬の払戻金は「雑所得」に当たると認定し、外れ馬券の購入費は必要経費と判断。男性が申告しなかった所得を約1億6千万円、脱税額を約5200万円と認定し、「外れ馬券も経費に認めるべきで、男性の所得は約1億4千万円にすぎない」としていた弁護側の主張に近い判断を示した。
公判で検察側は、「競馬の勝ち負けは1レースごとに決まる」として、もうけは所得の種類の中の「一時所得」と指摘。一時所得は所得税法で「収入に直接要した金額を経費とする」と定めていることから、「経費と認められるのは当たり馬券の購入費だけ」と主張していた。
これに対し弁護側は、「元会社員は多種類で多数の馬券を継続的に購入していた」ことから、一時所得に当たらないと反論。「外れ馬券も含めたすべての馬券の購入がなければもうけは生まれなかった」として、外れ馬券を含めた購入総額が原資だから経費に算入するべきだ、と求めていた。
元会社員は、国税当局の課税処分を不服として、取り消しを求める民事訴訟を大阪地裁に起こしている。
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