持ち家という「人生最大の買い物」につきまとう住宅ローン金利は、少しの上昇でも庶民の肩にずしりとのしかかる。にもかかわらず、この3月末の"金融モラトリアム法"期限切れによって、3兆6000億円もの「日本版サブプライム問題」が燻り、毎月の返済だけで青息吐息の庶民に金利上昇パニックが襲いかかろうとしている。
政府・金融庁はモラトリアム法の期限切れに伴う激変緩和措置として、中小企業向けの融資などを調査し、金融機関の支援状況に目を光らせていく方針を打ち出している。金融庁監督局でも、「中小企業だけでなく、住宅ローン借入者に対しても、金融機関が貸付条件の変更など円滑な資金供給に努めるべきということは今後も何ら変わりなく、各金融機関に対しても、監督指針を改正して促しています」と説明する。
各メガバンクの担当者も、「銀行だって鬼ではない。『直ちに返せ』などと急激な回収に走るようなことはあり得ない」と、口を揃える。
しかし、現実には、すでに返済猶予打ち切りの事例が相次いでいる。中には「今年後半にも土地の価格が上昇していれば、立地がいい好条件の物件から競売にかけて処分するケースが増えるでしょう。借りている顧客にしてみれば家は失うが、ローン地獄から解放されるメリットはあるんじゃないですか」(メガバンクの住宅ローン担当者)と、なんとも冷たい本音が見え隠れする。
住宅ローンの返済が滞ると、次のような手順で処理が進む。
まず滞納が3か月を超えると金融機関から「督促状」が届く。多くの場合、その時点で保証会社が債務を肩代わりして金融機関に支払うことになるが、それでも滞納が続くと、やがて保証会社は金融機関に支払った分の残債を一括請求してくる。もちろん、その段階で全額返せるはずもないので、住宅を売却して一括返済させるための競売開始が決定する。
ただし、競売による落札価格は一般的な取引価格の6〜7割程度になってしまうため、家を手放してもローンがまだ残るというケースは少なくない。その返済もままならなければ自己破産も現実味を帯びてくる。
この競売件数はモラトリアム法が施行されるまでは年間6万件ペースだったが、施行後は約1万5000件減って年間4万5000件前後で推移してきた。住宅ローン問題の相談に乗る安田コンサルティングオフィスの安田裕次社長は、警鐘を鳴らす。
「つまり、同法施行後3年間で毎年1万5000件の住宅ローンが救われてきたわけです。しかし、今後は3年間の累計4万5000件が競売に転じてしまう可能性がある。今後の動向も考えていくと、約5万世帯が"破産予備軍"といえるかもしれません」
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