2014年6月30日月曜日

「保証期間が切れた直後に壊れるタイマー付き製品」は実在するか?

製品の品質が気になる人には是非一読すべき良い文章です。
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ITmedia PC USER 6月30日 0時16分配信 「うわっ、この製品、保証期間が終わった途端に故障した。買い替えさせるため、ワザと一定期間後に壊れるトラップをしかけたな!」──こうした「陰謀論」は、面白おかしい話題を好む人々にとって格好のネタということもあり、真偽不明のまま語られ続けている。それとおぼしき事象が発生した際に「やっぱりか!」と再燃し、さらにウワサが広まる、というのがお決まりのパターンだ。 では、実際にこうした「仕込み」はあり得るのか。先に結論を言ってしまうと「存在しない」と考えてよい。理由は単純で、早く壊れてくれたほうが買い替えを促進できてもうかるというのは、オンリーワンのメーカーにしか通用しない論理だからだ。 一般的なユーザーは、想定よりも早く製品が壊れた場合「このメーカーの製品は故障しやすい」と判断し、他社の同等製品に買い替えようとする。自社製品への買い替えを企図したつもりが、他社をもうけさせる結果になってしまっては意味がない。 ただし、である。製品が成熟して部材選定や設計の見直しが繰り返されていくうちに、それぞれの部品の寿命が徐々に等しくなり、結果として「あの製品は使い始めてちょうど〜年ごろによく故障する」となるケースは、限定的な条件下においては十分に考えられる。今回はこうした部品選定と設計にまつわる裏事情について見ていこう。●機械的な可動部分をなくして製品の耐久性を上げる IT系の機器は、複数の部品が組み合わさってできている。その部品の中には自社で製造したものもあれば、他社から仕入れたものもある。たとえ巨大なコングロマリット的なグループに所属しているメーカーがあったとしても、ビス1本に至るまで自社グループで製造しているケースは、まずないといっていい。 さて、こうした部品の中には、明確な耐用期間が存在する部品もあれば、そうでない部品もある。例えば製品の基板が壊れるのは、せいぜい外部からの衝撃で割れたり、水をかぶったり、過剰な電圧がかかってショートするといった要因が主で、使い続けた結果、物理的に摩耗して動かなくなるといったことはまずない(コンデンサの経年劣化などはあるが)。 これに対して、ヘッドが物理的に動いてプラッタのデータを読み書きするHDDや、各種ドライブに搭載される放熱用のファン、さらには抜き差しが繰り返されるコネクタなどは、定められた耐用期間もしくは回数がある。例えばMicro USBコネクタは、約1万回の挿抜回数が定められているといった具合だ。これらは機械的に摩耗するだけに、寿命を延ばすにも限界がある。したがって故障の原因となりやすい。 それゆえ設計の段階で、これら機械的な可動部分をなくして製品の耐久性を上げるというのは、有効な解決策だ。例えばHDDをSSDに差し替えるのもの手だし、放熱機構を最適化することでファンそのものをなくすというのもその流れの1つとなる。前回紹介したように、物理ボタンを排除してタッチ操作に統合するという動きも、その一環である。 また、スマホやタブレットでカードスロットがない製品は、決してコストをケチっているわけではなく、故障率の低下をより重視していると見方を変えれば、そのメーカーなりの考えが設計に反映されていることが理解できるはずだ。●ある時期に集中して故障するようになる理由とは? さて、設計の見直しや部材の変更で故障率を下げるのは結構なことだが、これによって製品のコストが上がりすぎるのも、メーカーにとっては大きな問題だ。そもそもIT系の製品は、進化が早い製品なら2〜3年、長くても10年あれば、買い替えられるのが常だ。普通に使っていて1年もたたずに故障する部品が混じっているのは確かに問題だが、逆に20年や30年相当も故障しない部品があっても、あまり意味がない。その部品が製品の原価を上げる要因になっているのであれば、なおさらだ。 もし、20〜30年相当は使い続けられる部品を10年相当しか持たない部品に差し替えることで、部品の単価が下がるのであれば、それは設計の最適化にほかならない。こうした見直しをあらゆる部品に対して行っていけば、製品の原価は確実に下げられる。 一般的に、製品が成熟すればするほど、こうした設計の見直しが進み、部品単位での寿命も収斂(しゅうれん)されてくる。寿命が短く故障しやすい部品はなるべく使用を控えるか、長寿命な部品に差し替え、メーカーが定める期間内は故障しづらくする一方で、寿命が不必要なまでに長い部品は短命かつ安価な部品に差し替え、コストを削減するというわけだ。 こうして製品がブラッシュアップされていくと、その結果として起こりうるのが「ある時期に集中して故障するようになる」という現象だ。その中には、本来もっと早く故障してもおかしくなかった部品が、設計変更や部材見直しで延命されて持ちこたえた例もあれば、その逆にコスト削減で早く故障するようになった例もあるが、どの部品も一定の寿命を想定して選定された結果、原因はまったくバラバラであるにもかかわらず、見た目にはある時期に故障が集中するように見えるわけである。 ユーザーレベルでこうした部品の寿命とおぼしき故障に遭遇した場合、最も適切な対応策は「修理せずに手放す」ことだ。というのも、ある部品が寿命で故障したということは、その製品の部材の寿命が設計レベルで最適化されていた場合、その故障をきっかけに次々と寿命を迎える可能性が高い。なので、寿命らしき故障を迎えたら、修理せずに買い替えるというのは、繰り返し故障に遭遇しないための、1つの知恵ではある。 ただし落下や浸水など、部品の寿命とは関係のない故障は、このケースには当てはまらないので注意してほしい。また製品の世代が若く、まだまだ成熟していない場合も、このケースには当てはまらないだろう。部品レベルで最適化される段階にまで至っていないからだ。この辺りの線引きは実にややこしい。●寿命はコントロールできても時期はコントロールできない ここまで読まれた方は「じゃあやっぱり、製品をあるタイミングで意図的に故障させることは可能なんじゃないか!」と、本稿冒頭に書かれた結論に疑問を持つかもしれない。しかし、ここには1つの要素が抜け落ちている。それは、部品単位で寿命をコントロールすることはできても、その「時期」を明確に指定することは極めて困難ということだ。 製品を1日にどれだけ使うかは、ユーザーによってまったく異なる。24時間電源を入れっぱなしにする人もいれば、1週間に数時間程度しか使わない人もいる。製品の寿命はこれによって大きく変動しうるわけだが、こうした「実利用時間」によって保証期間を定めることは実質的に不可能だ。 そのため、ほとんどの製品は「購入後1年」といった、購入日をベースにした保証期間の設定を行っている。1年365日電源を入れっぱなしでフルに使っているような場合は、1年間まったく使っていない場合に比べて故障する確率が極めて高くなるが、1年以内は等しく保証しますよ、というわけだ。ある意味、太っ腹な考え方である。 さて、先に述べた部品の寿命は、購入後の日数ではなく、実際に使用している時間に大きく影響される。それゆえ、実利用時間を考慮せずに「購入後2年は故障せずに持たせる」「それを過ぎたら故障しやすくなる」と人為的にコントロールするのは、現実的に不可能だ。先に述べた部品の寿命で「20〜30年相当」「10年相当」と、くどいまでに「相当」と書いているのも、あくまでメーカーが定めた利用頻度、例えば1日に4時間といった基準に基づいた目安であるからにほかならない。 これに加えて、実際の利用シーンでは気温や湿度など、部品の寿命に影響を及ぼしやすい要因がいくつもあるほか、タバコを吸っていて製品が煙にまみれやすかったり、ペットを飼っていて毛が吸気口をふさぎやすいといった要因も、製品の寿命に大きな差をもたらす。要するに変動値が大きすぎるのだ。こうした条件を無視して、決まったタイミングで故障するギミックを実装するよう指示を出されたら、エンジニアは頭を抱えてしまう。 あり得る方法としては、初回の電源投入時に起動するようなタイマーをチップレベルで仕込んでおくことだが、これだと証拠が残ってしまううえ、冒頭にも書いたようにオンリーワンのメーカーでもなければ、逆効果になるリスクのほうが高い。 また、部材レベルで何らかの仕込みを行ったとしても、保証期間が切れる前に故障することが相次いだりしようものなら、それこそ会社が傾きかねない。「関係者」が存在しないがゆえに誰もコメントできないこのウワサ、こうした部材レベルの事情から見ても、やはり都市伝説の域を出ないというのが正しい見方だ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140630-00000001-zdn_pc-sci

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