2014年6月6日金曜日

死亡事例4例目、米国の狂牛病対策の今

米国内で先月、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)による4例目の死亡患者が確認された。保健当局は国外での感染と見ている。

 米国疾病予防管理センター(CDC)は、アメリカで4例目となる変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)による死亡事例を確認したと発表した。vCJDは、死に至る恐れのある珍しい脳疾患で、"狂牛病"として知られる海綿状脳症(BSE)を発症したウシの肉を食べたことで感染する可能性が指摘されている。

 新たな死亡報告によって、一部では食の安全に対する不安が再燃している。

 今回報告された患者は、テキサス州で5月に亡くなり、病理解剖によってvCJDが確認された。vCJDは1996年にイギリスで最初の患者が報告されて以来、220人以上の死亡が確認されており、これに関連して多数の食用牛が殺処分されている。神経変性疾患の一種で、抑うつなどの初期症状から、認知症を経て死に至る。

 CDCによれば、今回の患者はヨーロッパや中東の広範囲に滞在経験を持ち、それゆえ「アメリカ国外での感染の可能性が高い」という。アメリカの過去3人の死亡患者についても、うち2人はイギリス、1人はサウジアラビアと、いずれも国外での感染が原因と考えられている。

「この患者を媒介として、米国内のほかの人物がvCJDに接触したと考える根拠は見つかっていない」と、CDCの広報担当者クリスティン・ピアソン(Christine Pearson)氏は言う。

 テキサス州保健当局のキャリー・ウィリアムズ(Carrie Williams)氏も同意見である。「過去の旅行経験から、海外で(vCJDに)接触した可能性が考えられる」とウィリアムズ氏は言う。当局のウェブサイトにも「テキサス州内では、本件に関する公衆衛生上の懸念材料や脅威は一切存在しない」と書かれている。

 業界団体である全米肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)の首席獣医であるキャシー・シモンズ(Kathy Simmons)氏も、今回の感染源は海外であろうとの見方を示す。シモンズ氏は声明の中で「アメリカ国内での牛肉消費に直接関連のあるvCJDの症例は報告されていない」と述べている。

 またシモンズ氏は、国際獣疫事務局(OIE)が昨年、アメリカのBSEリスクステータスを変更し、発生可能性のもっとも低い「無視できるBSEリスク」の国に認定したことにも言及した。哺乳類に由来するタンパク質を家畜のエサとすることはアメリカ食品医薬品局(FDA)が禁止しており、食用牛の抽出検査も行っている、などの安全対策を紹介した。

 アメリカ農務省(USDA)はBSE対策として、年間4万頭の家畜について、死後に脳検査を行っている。これは全米の飼育数の0.1%以下である。農務省は一時期、検査数を増やし、BSEリスクの高い個体の抽出検査を行っていたが、現在の検査数は2005年に比べて90%も減らされている。

 vCJDは近年になって確認されたクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)の変異型であるが、従来のCJDはBSEとは無関係である。米国では毎年約300人のCJD患者が報告されており、患者の死亡年齢の中央値は68歳。これに対し、vCJD患者の死亡年齢の中央値は30歳以下である。

 アメリカ消費者同盟(CU)の常勤上級研究者であるマイケル・ハンセン(Michael Hansen)氏は、OIEによる格付けには問題があると指摘する。「米国内の自己申告に基づいており、何ら科学的根拠を持たない」というのがその理由だ。ハンセン氏は、消費者を危険な食品から守る上で、政府機関の対策が万全であるとは言えないとの見解を口にする。

 CUでは、前回アメリカ国内で狂牛病が大きな話題となった2012年に発表した声明を再び取り上げている。「(現行の)BSE対策は十分でなく、FDAはさらなる対策を取って、動物と、牛肉を食べる人々の健康を守るべきである」というものだ。

 2012年の声明は、4月にカリフォルニア州セントラルバレーにある化製場の通常の検査において、BSEの乳牛が見つかったことを受けて発表されたもの。この乳牛は、攻撃性や起立不能など、BSEの兆候を示していたため、流通網には入っていないという。

 ハンセン氏は、FDAの飼料規制には「重大な抜け」が残っていると指摘する。「乳牛から血液を採取して乳牛に与えるのは自由だ。血液および血液製剤は規制を免れているからだ」。鶏糞や鶏舎のごみ(チキンリッター)が牛の飼料に使われることがあるが、これにも肉骨粉などが混入している可能性がある。アメリカ国内で最大規模の牛肉の買い付けを行っているマクドナルド社では、過去何年にもわたって、チキンリッターの家畜飼料としての使用の禁止を申し入れているが、いまだ実現していないとハンセン氏は言う。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140605-00000003-natiogeog-sctch

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