2014年6月10日火曜日

変化するキャリアのAndroid戦略 新機種が減り続ける理由とは

製造業はいつでも大変です。
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各キャリアから2014年夏商戦向けのAndroidスマートフォンが発表されたが、その機種数は以前から大幅に減少。かつてのようにさまざまな個性派モデルが出そろう――という状況ではなくなってきている。その理由と影響について考察してみたい。

●夏商戦のスマートフォンから何が見える?

 携帯電話の商戦期は、ボーナスシーズンの夏と冬、そして進入学や就職、新生活を迎える春と、大きく分けて3つに分かれる。このうち春商戦は、主に学生がターゲットとなるため新機種よりも価格施策が重視される傾向が強い。スペックを重視した新商品が投入されるタイミングは、ボーナスで社会人が端末を買い替える夏・冬商戦に向けてとなる。

 そして2014年も、夏商戦に向けてさまざまな新機種やサービスが発表された。NTTドコモは「VoLTE」と新料金プランで通話を重視、KDDI(au)はキャリアアグリゲーション(CA)とWiMAX 2+に加え、新しい電子マネーの「au WALLET」で決済サービスに力を入れている。またソフトバンクモバイルは新製品発表会を実施しないなど、各社の戦略は三者三様に大きく分かれる形となった。

 一方で、各社が投入する夏商戦向けスマートフォンを見てみると、NTTドコモが7機種、auが6機種、そしてソフトバンクモバイルが1機種となっている(6月9日現在)。このスマートフォンの機種数と内容を以前と比較してみると、キャリアのスマートフォン戦略に大きな変化が起きているのが分かる。

●減り続けるスマートフォン新機種、その理由は?

 まずは、スマートフォンへのシフトが本格化した2011年以降の、主要3キャリアにおける夏・冬商戦向けに投入された端末数推移を、グラフにまとめたので確認して欲しい。

 このグラフでは、春・秋の商戦期のみを狙って投入されたモデルなどを含めていないことから、特に春商戦に向けて端末を投入することが多いauなどは、端末数が少なく出てしまうことはご了承頂きたい。だがそれでも、大まかなスマートフォン端末数の推移を確認することはできるだろう。

 そしてこのグラフから見えてくるのは、投入される端末数が一定の時期をピークとして減少傾向にあることだ。ソフトバンクモバイルは2011年、ドコモやauも2012年にピークを迎えており、それ以降商戦期に投入される端末数は減少、もしくは横ばいの傾向が続いている。特に減少が著しいのはソフトバンクモバイルで、かつては最大9機種も投入していたのが、今年の夏商戦では「AQUOS Xx 304SH」1機種のみにまで減少してしまった。

 キャリアがスマートフォンの機種数を減らしている理由の1つは、端末の差別化要素が少なくなってきたことが挙げられる。スマートフォンの販売が本格化した当初は、デザインに注力したものやQWERTYキーボードが付いたもの、ダイヤルキーが付いたものなど、個性的なモデルが多く登場していた。だがタッチパネルの大画面・ストレートモデルに人気が集まったことで個性的なモデルの販売が伸び悩み、結果として形状による差別化が困難となり、スペックと価格以外でスマートフォンの違いを見出しにくくなってしまっているのが現状だ。

 2つ目は、そもそもスマートフォンを積極的に購入するユーザー自体が減少しているということ。日本のスマートフォン普及率は現在、5割を超えたかどうかという状況だが、にもかかわらずここ2、3年続いていたスマートフォンへの買い替えが、2013年中盤ごろから急速に鈍ってきているといわれている。その要因としてはスマートフォンのランニングコストが高いことや、フィーチャーフォンの利便性が高くユーザーの愛着が強いことなどが考えられる。いずれにせよ、スマートフォンの買い替え需要自体が鈍り、端末販売数が増えていないことが、スマートフォン機種数の減少にも大きく影響を与えていることに間違いはない。

 そしてもう1つは、各キャリアがiPhoneを重視した販売戦略をとるようになったこと。日本では若年層を中心としてiPhoneが高い人気を獲得し、iPhoneの有無がキャリアの業績を左右する程の状況をも生み出した。そうしたことからキャリアはiPhoneの販売に注力するようになり、結果として他のスマートフォンの販売量が減少。iPhone以外の新機種数を絞る動きへつながっていったといえる。

●大きく変化するキャリアとメーカーとの関係

 そうした背景からキャリアは端末の種類を大幅に絞る戦略に出ているのだが、その影響を大きく受け、苦しんでいるのがアップル以外のスマートフォンメーカーだ。「Xperia」のブランド力を高めて支持を得たソニーモバイルコミュニケーションは比較的健闘しているが、2013年はパナソニック モバイルコミュニケーションズやNECカシオモバイルコミュニケーションズがコンシューマー向けのスマートフォン市場から撤退するなど、ほとんどの国内メーカーは総じて厳しい状況にある。

 厳しい状況に追い込まれているのは国内メーカーだけではない。スマートフォン黎明期に、性能の高いハイエンドモデルとドコモとの強力なタッグで「GALAXY」を強いブランドに育て上げてきたサムスン電子でさえ、Androidスマートフォンの没個性化の波にのまれたうえ、NTTドコモがiPhoneに注力したことで販売面での支援を受けづらくなったことから、存在感を急速に低下させている。アップル以外の海外メーカーも、総じて厳しい状況にあるのだ。

 そうしたことからメーカー側も、日本市場での生き残りをかけて戦略を大きく変更するケースが目に見えて増えてきた。中でも非常に大きな動きとして注目されたのが、LGエレクトロニクスの戦略変化である。同社はフィーチャーフォンの時代より、ドコモ向けを重視して端末供給をしてきたメーカーの1つ。だが2013年にドコモが実施した、特定の2機種を販売面で優遇する「ツートップ戦略」に採用されなかったことで、急速に端末販売数を落としたようだ。

 そこでLGは、2013年秋モデルでKDDIと共同で開発したスマートフォン「isai」を投入、au向けを重視するよう方針を転換した。2014年の夏商戦でも、LGはauにフラッグシップモデル「isai FL LGL24」を供給する一方、ドコモ向けスマートフォンの新機種はゼロとなるなど、明確な戦略転換が見て取れる。

●キャッシュバックが減少すると端末数は増える?

 iPhoneを重視し端末数を減らすキャリアと、生き残りをかけキャリアから距離を置き始めたメーカー。iPhoneの好調がもたらしたキャリアのスマートフォン戦略変化は、これまで密接だったキャリアとメーカーの関係にも、大きな変化をもたらしている。

 もしこの傾向に、再び変化が起きる可能性があるとするならば、それには"キャッシュバック"が大きく影響してくるだろう。2014年の春商戦にはキャリア各社が、MNP利用者に対し非常に高額の多額のキャッシュバックを付与して販売促進していたということは、ご存じの方も多いと思う。

 この高額キャッシュバックで販売を伸ばしていたのはiPhone、しかもハイエンドモデルのiPhone 5sである。なぜなら、各キャリアがMNP利用者に対して多額の販売奨励金を積んだことで、多くの端末の購入代金が0円、かつキャッシュバックが付与されるという異常な販売スタイルが横行した。高額なハイエンドモデルまでもが0円で購入でき、しかも"お釣り"が来るような状況であったことから、人気の高いiPhone 5sにますます人気が集中した訳だ。

 だが高額キャッシュバックの問題がメディアに大きく取り上げられたことで、春商戦の終わり頃からキャリアがキャッシュバックの額を抑制するなど、自粛ムードが広まっていった。それとともに、iPhone 5sの販売も落ち着く傾向にある。iPhoneの新機種投入が控えていることも影響しているだろうが、最近の端末販売ランキングの傾向を見ると、iPhone 5sの販売シェアが従来より落ちてきているのは明らかだ。

 一方で最近では、スマートフォンに詳しくない人達を中心に、いわゆる"格安スマホ"が大きな注目が集めるなど、価格の安いスマートフォンへの人気が高まっている。それだけに今後、キャッシュバックの減少による端末の高額化の影響を受ける形で、比較的安価なモデルを中心として、再び新機種投入が活性化する可能性も十分考えられそうだ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140609-00000083-zdn_m-prod

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