2014年5月27日火曜日

読みやすいようで、実は“読みにくく”なる拡大機能

これはいわゆる人間工学ですね。
そういう意味ではマイクロソフトのサーフエスは老眼に最悪でしょう。
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電子書籍だからこそ実現できたと言える機能の一つに、画面のカスタマイズ機能がある。背景色や行間を変えたりする機能などがあるが、中でも最も使うシーンがあると思われるのは文字の拡大縮小機能だろう。画面のピンチアウトやボタン操作で、文字サイズを自由に変えられる。
 電子書籍だからこそ実現できたと言える機能の一つに、画面をカスタマイズできるというものがある。背景色や行間を変えたりする機能などがあるが、中でも最も使うシーンが多そうに思われるのは文字の拡大縮小機能だろう。画面のピンチアウトやボタン操作で、表示する文字サイズを自由に変えられるのだ。
 確かにこの機能、小さい文字が見にくいという人は重宝するはずだ。通常の本の文字は小さすぎて読みづらいという場合でも、電子書籍なら拡大して読むことができる。少々老眼が入り始めている自分も、読む本の標準の文字サイズが少し小さいと感じるときは、この機能がありがたい。
 しかし、この一見便利に思える機能には落とし穴がある。当たり前のことだが、文字のサイズは拡大できても、画面全体のサイズは拡大できるわけではない。画面が4インチの端末は、魔法でも使わない限り4インチのままだ。画面サイズは変わらないのに文字サイズだけ大きくなるので、一画面に表示できる文字の量が減ってしまうのである。
 本は基本的に頭のほうから文字を追いつつ読み進めるものなので、一画面の文字量が減っても読むことはできる。しかし、本は常に一直線に読んでいくものではない。一読しただけでは論理の展開についていけず、前の部分を読み返したり、書いてあることの前提条件を確認したりしたくなるケースはよくあると思う。文字サイズを拡大していて、一画面に表示される文字数が少ないと、直前に書いてあるのに、わざわざページをめくる操作をしなければならないのだ。
 「ページをめくる操作ぐらい、それほどの手間ではないだろう」と思われるかもしれない。確かにボタンや画面のフリックでページをめくるのは簡単なことだ。しかし文字サイズを拡大していて、確認したい場所を探すために、フリックの動作を短時間で繰り返さなくてはならなくなると、とたんに煩わしく感じるようになる。
 特にスマートフォンで文字サイズを拡大すると、ページめくりの動作だけで指が忙しい。
 いったんページめくりがめんどくさくなってくると、前のページに戻りたいと思っても、「ま、いっか」と妥協してそのまま読み進めてしまう。それを繰り返していると、本の内容を正確に読み取ることができなくなり、読後感は「あまりおもしろくなかったな」ということになりかねない。それではせっかく買った本がもったいないし、本の作り手もきっと悲しむことだろう。

「線」ではなく「面」で読んでいる

 40代以上の方は、パソコンの普及以前に文書作成マシンとして広まった「ワープロ専用機」の存在を覚えていると思う。初期のワープロ専用機は、ディスプレイ部分が小さくて、表示できるのはわずか数行分だった。しかしその後、ユーザーの要望に応える形で徐々に大画面化が進んでいった。
 表示するものが基本的に文字だけのワープロ専用機でも、いま読み書きしている部分だけでなく、前後を含めた広い範囲を一度に表示することが望まれていたわけだ。つまり人は文字を、「線」ではなく「面」で理解しながら読み書きしているのである。
 狭い画面で文字を拡大する行為は、この「面」を相対的に狭めてしまっていることになる。緊急避難的な文字の拡大、例えば難しい漢字でディスプレイ上ではつぶれてしまってるような場合、一時的に拡大して文字を認識するのには確かに有効だ。しかしそのままの状態でずっと読み続けることはおすすめできない。実際にスマホ上に表示した電子書籍で、文字を拡大して読んでみると、いかに読みにくくなるかが実感できると思う。

左は標準状態。文字が小さいからといって右のように拡大すると、情報量が少なくなり逆に読みにくくなる
 そもそも紙の書籍は、編集者が本の内容や対象読者の年齢層をふまえて、使うフォントの種類や大きさ、行間スペースなどを決めてレイアウトしている。紙の書籍のイメージをそのまま電子化した電子書籍でも、編集者の配慮は生かされているのだが、読者が文字を拡大するとそうした配慮は台無しになってしまう。極端な言い方かもしれないが、シェフが細心の注意を払って提供してくれた料理に、いきなり醤油やソースをかけて食べるようなものと言えるかもしれない。
 電子書籍で「文字を拡大できる」機能は一見ありがたいようではあるが、実はそれは本をおもしろくなくする危険をはらんでいる。電子書籍で読書を楽しむためには、そのことを理解しておいた方がいい。
同期機能を使って複数の端末で読み進める

 電子書籍を読める端末は、大きく分けてスマホ、タブレット、専用端末。アカウントが共通なら、一つの書籍を複数の端末でダウンロードして読むことができる。つまり同じ本を、シーンに応じて異なる端末で読むことができるのだ。そうした読み方をする場合に便利なのが、どこまで読んだかという情報を異なる端末間で同期する機能だ。

 ある電子書籍を購入し、タブレット端末とスマホでダウンロードした場合、その両者で読みかけの状態を共有することができる。例えば自宅のリビングにあるタブレット端末で50ページまで読み、翌日通勤途中にスマホでその本を開く。スマホでは50ページより前までしか読んでいない状態でも、タブレット端末で50ページまで読み終えたという情報をもとに最後に表示したところまで移動するかを尋ねられ、そこまですぐにページを移動することが可能だ。スマホでさらに読み進めると、帰宅後に電子書籍を開いた自宅のタブレットでも、スマホでそこまで読んだことを表示し、続きから読めるようになる。

別の端末で先まで読んでいた場合、そこまで移動するかを尋ねられる
 この機能を使えば、一つの本を一つの端末にしばられず読み進めていくことができる。本をどこまで読んだかを自分で記憶したり、ブックマーク機能を使って記録したりしなくても、端末を意識することなく読み進めるわけだ。同じ本でも読書のシーンに応じて端末を使い分けることが容易になる。

 ただしこの同期の機能はネットワーク経由で行っているため、Wi-Fiなどネットワークにつながっていない状態のタブレットや電子書籍では同期できない。また一つの書籍をダウンロードできる端末の台数にも制限があるが(例えばKindleの場合で最大6台)、この機能を使えば、より多くの時間、本に触れられるようになる環境が整うのは間違いない。

http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/column/20140521/1057722/?ST=trnmobile&rt=nocnt

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