2014年3月1日土曜日

本格的な使い勝手と画質、小さなOM-D「OLYMPUS OM-D E-M10」

同じマイクロフォーサードでセンサーで考えるならば、面白い選択肢でしょう。

一方、画素単位の品質をも念頭に入れてあるならば、当然APS-Cセンサーを使って製品との比較もすべきでしょう。

 オリンパスの春の新製品は、毎年登場するPENシリーズではなく、OM-Dの新モデル「OM-D E-M10」だった。めでたく、OM-D三兄弟のそろい踏みである。

【写真で見る:「OLYMPUS OM-D E-M10」 】

 いやめでたいのかどうか分からないけれど、今この時期に出してきたのが、エントリー向けのPENでも、初代OM-DであるE-M5の後継機でもなく、E-M5の下位にあたるE-M10である、というのが重要なのだ。

 ミラーレス機へのEVF標準搭載の流れである。

 ちょっと前まで、ミラーレス機の代名詞といえばオリンパスのPENやソニーのNEXで、どちらも背面モニタがメインの小型軽量なモデルだった。EVFはハイエンド機には搭載されていたけれど、ミドルレンジとなるとパナソニックのGシリーズ、ソニーのNEX-6ぐらいだった。

 それがここ1~2年でミドルレンジ以上のミラーレス機が続々とEVFを搭載しはじめ、もはやそれが当たり前となった。従来のミラーレスはコンデジからのステップアップを重視してたのに対し、EVF搭載ミラーレスは一眼レフ市場を狙い始めたのである。EVFとAF性能が上がったことでそれが現実的になってきたのだ。

 面白いことに、この1年で登場したEVF搭載ミラーレス機は、高性能なEVF+チルト式モニタという共通点を持っている。EVFを使えば一眼レフ的にしっかり構えて集中して撮れるし、背面モニタを使えばコンデジ的にラフに撮れるしローアングルへの対応も容易で、両者をスムーズに切り替えて使える。その柔軟さが、一眼レフに対する大きなメリットだ。

●E-M10はE-M5の後継機ではなく弟分

 E-M10はE-M5と非常によく似た、フィルム一眼レフ風デザインのEVF搭載ミラーレス一眼だ。カメラの大きさ、特に厚みは往年にMF一眼レフカメラに近く、分厚くなってしまった一眼レフよりもフィルム時代の一眼レフに似てるくらい。

 妙に一眼レフくさいとんがり頭のデザインにしたのはオリンパスの趣味だろうが、背面モニタの真上にEVFをつけるとどうしても中央部が盛り上がるのは仕方なく、それなりに理にかなった形状。構えた感じもほどよいサイズで使いやすい。

 E-M5と比較されやすいのだが、E-M10はE-M5の後継機ではなく、その下位モデルと言いたい。その操作系はE-M5をまるっと継承しており、2つの電子ダイヤルを持ち、マニュアル系の操作も軽快に行える。背面モニタはチルト式でタッチパネルを採用。背面モニタで撮影するときのタッチAFは非常にレスポンスもよくて便利だ。

 撮像素子はローパスフィルターレスになった以外はE-M5と同等のマイクロフォーサーズの1600万画素だし、基本デザインや操作系も基本的には一緒。だから遠目には見分けは付かないが、いくつか下位モデルらしい差異がある。

 まずペンタ部(ペンタミラーもペンタプリズムも入ってないが便宜上そう呼びます)が少し低くなり、さらにストロボが内蔵された。OM-Dでは初のストロボ内蔵だ。ペンタ部のとんがり頭が少し低く滑らかになったのは、ストロボ内蔵にともなってアクセサリシューの下にあったAP2端子が省かれたのが大きい。

 AP2端子は外付けEVFやBluetooth通信ユニット「ペンパル」の装着、E-M5やE-M1などでは専用ミニストロボへの電源供給などに使われていたが、E-M10はEVFもストロボもWi-Fiも内蔵してるので不要なのだ。おかげで無駄なとんがりがなくなった。

 E-M1/E-M5で共通だったバッテリーは、一回りサイズが小さいもの(BLS-5)に変更された。シリーズ製品と異なるバッテリーというのは筋が悪そうだが、実は、E-PL6など、E-P5以外のPENシリーズやSTYLUS 1がこのバッテリーを採用しており、これはむしろE-M5の買い換えや買い足しより、PEN LiteやPEN Miniシリーズからのステップアップユーザーを考えた仕様だと思っていい。

 E-M5/M1のウリのひとつ、防じん防滴仕様は省かれた。E-M10はそこまでヘビーな利用を想定しないということで、一般的なユーザーにはその分だけ低価格になったことや、防じん防滴を考えなくて良くなった分、各種ボタン類の感触がよくなった方がいいだろう。

 もうひとつ大きな違いは手ブレ補正。E-M1/M5とE-P5は5軸手ブレ補正、PEN Mini E-PM2や、PEN Lite E-PL6は2軸手ブレ補正(こっちの方が一般的だ)を採用していたが、E-M10は新開発の3軸手ブレ補正を搭載。上下左右の2軸に加え、光軸回転ぶれにも対応している。5から3と聞くと減ったようだが、むしろ、2から3に増えていると思った方がよく、試用したところ、十二分の性能を発揮してくれた。

 このように、E-M10はE-M5の後継機ではなく、PEN LiteやMiniからのステップアップ機、EVF搭載ミラーレス一眼のエントリーモデル(エントリーというにはちょいとレベルが高いが)なのだ。

●使い勝手、画質ともに本格派

 このようにE-M10はE-M5をベースにしつつ、グレードを少し落としたカメラといえそうなのだが、個人的にはもうちょっとグレードと価格を落としてもよかったんじゃないかというくらい、良いところはきちんと受け継いでいる。

 EVFはE-M5同等のレベル。ハイエンド機のE-M1や同時期に登場した富士フイルム「FUJIFILM X-T1」に比べると大きさ・精細度ともに及ばないが、十分に明るくて見やすい。特に「キャッツアイコントロール」機能がいい。

 EVFはアイピースを直接のぞくので外光の影響を受けず晴天下でも見やすいと言われるが、実のところ、晴天下では目がその明るさに慣れているのでEVFをのぞいてもしばらく暗く感じるし、暗所ではその逆。さらにメガネをかけてるとメガネと目の隙間から外光が入るのでそれが邪魔をしてEVFが暗く感じてしまう。E-M10では外光に呼応してEVFの明るさを調節してくれるのでその違和感を覚えない。使ってみると予想以上に快適だ。

 EVFで気になる反応速度もまあまあ。MF時は拡大表示にすればディテールにピントを合わせやすい。EVFと背面モニタは自動切り替えだが、背面モニタがチルトしているときはそのアイセンサーがキャンセルされるので誤ってEVFに切り替わることもない。

 キャッツアイコントロールとアイセンサーキャンセルは細かい事だが、EVFと背面モニタを半々くらいで使い分ける人にとってはストレスがすごく減っていい。

 操作系でE-M5と違うのは、ISO感度とホワイトバランス(WB)。前ダイヤルでISO感度、後ろダイヤルでWB(逆も可能)を変更できるのでスッキリした。ISO感度はISO 200からISO 25600に設定可能と幅広いが、ISO6400以上は拡張感度扱いになる。またISO lowにセットするとISO100相当の感度も使える。ISO lowにするとISO200よりノイズは減って滑らかになるが、ダイナミックレンジが少し狭くなってハイライトが飛びやすくなる。

 画像処理エンジンが最新のものになったぶん、E-M5よりディテールの表現力や高感度時の画質も上がっているようだが、撮り比べてみるとそれほど大きな差はない感じだ。

 シャッタースピードは1/4000秒が上限とE-M5と同じ。逆に遅い方は新しくバルブ撮影に加えてコンポジット撮影機能が付いた。スローシャッターで連写して合成するという機能だが、合成時にハイライト部が飛びすぎないよう考慮するので、街と星景、あるいは超スローシャッターで夜景を撮って動きを出したいときなどに使える。

 連写は高速連写モード時で秒8枚(ただしAF追従しない場合)。これはなかなかよい。

 撮影モードはPASM、iAUTO、シーン、アートフィルター、フォトストーリーモードとオリンパスならではの構成。HDRや手持ち夜景などの機能も備える。iAUTO時はシーン自動認識が働き、色はかなり派手に変わる。

 最後にレンズの話も。

 新しいキットレンズ、「M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ」が面白い。収納時の厚さが22.5mmミリと超薄型のパンケーキ電動ズームレンズなのだ。カメラ本体の電源と連動してせり上がる仕組みになっており(従来のキットレンズは手動でレンズを繰り出す必要があってで煩わしかった)使い勝手はいいし、非常に薄いので携帯性も高い。それでいてクオリティはキットレンズにしては高く、よくこのサイズでと思うほど。重量も93フラムとおそろしく軽い。

 電動ズームはリングで行うが、リングは回転せず、左右に少し回すだけという感じ。面白いのは別売りの自動開閉キャップ「LC-37」。シンプルな仕掛けで、レンズの動きに応じて開閉する。

 この薄さはOM-DよりPENに似合いそう。PENシリーズのキットレンズもこちらに切り替えて欲しいくらい(まあ新製品が出るときに切り替わると思うけど)。

 もうひとつ「M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8」、つまり50ミリ相当でF1.8の標準単焦点レンズも登場した。オリンパスの単焦点レンズには、明るくて高価でちょっと大きいハイエンドなレンズ(12mm F2や75mm F1.8)と、軽くてコンパクトで価格も抑えられた買いやすいレンズ(45mm F1.8)があるが、25mm F1.8はどちらかというと後者。25センチまで寄れるのもうれしい。

 パナソニック製で同一焦点距離のレンズ「LEICA D SUMMILUX 25mm/F1.4 ASPH.」に比べるとスペック的に劣る点はあるが、コンパクトさや価格では勝っており、1本目の単焦点レンズとしていい。

 総じて、E-M10はよくできたカメラで、一眼レフを買ってライブビューで撮るくらいなら、E-M10にした方が幸せになれるんじゃないかと思う。少なくとも、一眼レフよりこっちの方がコンパクトで軽く、携帯性は圧倒的に高いし、手ブレ補正の効きもいい。光学ファインダーの自然な見え具合は捨てがたいが、EVFでもこのクラスなら日常の利用には問題なく、コンデジに慣れているならば、この小ささはむしろ扱いやすく感じるはずだ。

 これから一眼レフを買おうと思っているなら、E-M10も候補に入れるべきだと思う。カメラとしてのデキはいいし下位モデルという言葉から連想される安っぽさもない。これからミラーレス機を狙うのなら、あるいは買い換えを狙うのなら、EVF付にするか、EVFは不要だからとコンパクトさを重視するか悩むことになりそうで、そういう意味では次のPENシリーズがどうなるか気になるところではあります。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140228-00000112-it_camera-prod

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