2013年8月16日金曜日

『風立ちぬ』喫煙シーンへの禁煙学会の苦言に批判殺到!「日本刀使う時代劇もNG?」

 賛否両論の話ですが、否の意見に沿って考えたら、ハリウッドの暴力的な映画についてはもっと規制すべきでしょう。何しろ、アクション系の映画やドラマによっては、銃撃のシーンはかなりの割合で登場するものはいくらでもあります。
 毎日のように拳銃による暴力で人がなくなっている社会にとっては、どんな影響をもたらしているかを真剣に考えるべきでしょう。

 日本アニメ映画界の巨匠・宮崎駿監督の5年ぶりの新作劇場映画、スタジオジブリ製作の『風立ちぬ』(東宝)が、7月20日の公開から23日間で累計動員450万人、興収55億円をそれぞれ突破し、大ヒット上映中だ。
 そんな『風立ちぬ』内で頻出するタバコの描写に対し、NPO法人・日本禁煙学会(以下、学会)が苦言を呈し、波紋を呼んでいる。

 学会が8月12日付で制作担当者へ送付した要望書「映画『風立ちぬ』でのタバコの扱いについて(要望)」によれば、「教室での喫煙場面、職場で上司を含め職員の多くが喫煙している場面、高級リゾートホテルのレストラン内での喫煙場面など、数え上げれば枚挙にいとまがありません」と具体的にシーンを列挙し、主人公が病室で結核患者の妻の横で喫煙するシーンや、学生が“もらいタバコ”をするシーンを特に問題視している。そして「さまざまな場面での喫煙シーンがこども達に与える影響は無視できません」「映画制作にあたってはタバコの扱いについて、特段の留意をされますことを心より要望いたします」と、制作側へ求めている。

 この学会の要望について、ネット上では早くも賛否両論の声が寄せられているが、この問題について、映画制作の現場を知る業界関係者や、実際に映画を見た観客たちは、どのように受け止めているのだろうか?

 まず、ある映画制作会社社員は、制作現場の実情を交えながら、次のように話す。

「タバコのポイ捨てや“歩きタバコ”、未成年の喫煙など違法な演出はもちろん極力避けますが、それ以外の喫煙シーンについては、演出上・登場人物の“キャラづけ”上の必要性から生まれるもので、意図的に自粛するようなことはありません。『風立ちぬ』における喫煙シーンもすべて、演出上必要なものばかりだと受け止められます。学会は、病室や教室、職場での喫煙シーンなどが頻出することを問題視していますが、戦中や終戦後間もない時代を描くほかの映画では、電車内や映画館など公共の場で喫煙するシーンは数多く見られ、当時の時代状況を描く上では、必然的な演出だったといえます」

 また、学生が“もらいタバコ”をするシーンについても、「戦争や震災という、常に死と隣り合わせの極限状態の中で、貴重な贅沢であるタバコを通じて友情を交わすこのシーンには、宮崎監督のさまざまな思いが込められている。その演出に対し、現在の価値観を持ち出し『違法だから駄目』ということに対しては、違和感を覚えます」と、学会の要望に否定的な感想を漏らす。

 加えて別の映画業界関係者は、学会が要望書の中で「なぜこの場面でタバコが使われなくてはならなかったのでしょうか。他の方法でも十分表現できたはずです」と指摘している点について、「制作サイドは、その当時の時代状況を踏まえ、より自然かつ日常的なかたちで、登場人物の置かれた心理状態やキャラクターを表現すればよいのかを検討した結果として、タバコを使った。その表現に注文をつけるのは、表現の自由を脅かす行為にもなりかねない」と指摘する。

 他の映画業界関係者も概ね同じような反応であったため、業界としては学会に否定的な受け止め方が大半である様子がうかがえる。

●割れる観客たちの声

 こうした見方は、日頃から喫煙の習慣のある人で、映画を見たという人たちの間でも同様のようだ。

 40代男性は、「学会のロジックでは、日本刀を使用する時代劇ドラマや、拳銃を使う任侠映画、相方の頭を叩きながら『バカ野郎』とツッコむ漫才やバラエティ番組も自粛しなければならないのか」との疑問を投げかける。

 30代女性も「喫煙者である私が言っても説得力がないが、そもそも国が法律で中毒性のある嗜好品・タバコの流通を許可していなければ、自分も喫煙せずに済んだと思っている人も多い。学会は喫煙シーンが多いこと自体も問題視しているようですが、国が認めている行為が出てくるシーンが多いからと、それを批判するのはおかしい」とコメントする。

 一方、非喫煙者で映画を見たという人たちの間では、「まったく気にならなかった」「確かにちょっと気になる喫煙シーンが多いと感じた」と、意見が分かれた。

 後者の意見として、40代女性は「子どもと一緒に映画館で見ていたが、喫煙シーンの多さや、たびたび出てくる学生が“もらいタバコ”をするシーンには、少し引っかかりを感じた。演出上の意図などがあるのは理解できますが、子どもは興味を持ったことはなんでもマネをしたがるので、問題がないとはいえない」と、演出に対する違和感を表した。

 また、禁煙中だという30代男性は、「確かに、頻出する喫煙シーンを見ているうちに、タバコを吸いたい気持ちが湧いてきたのは事実。もちろん制作側に意図がないにしても、そういう意味では映画が喫煙を助長しているともいえなくもない」と述べ、学会の苦言に理解を示した。

 このほかにも学会は、“もらいタバコ”のシーンについて「『未成年者喫煙禁止法』にも抵触するおそれがあります」としているが、ある弁護士は「制作サイドに故意に喫煙を助長する意図がないのは明らかだと思いますが、厳密に法を適用すれば、違法に当たる可能性もある」との見解を示した。

 学会は要望にあたり、「このお願いは貴社を誹謗中傷する目的は一切なく、貴社がますます繁栄し今後とも映画ファンが喜ぶ作品の制作に関わられることを心から希望しております」としているが、今回の要望をめぐる議論が、今後のテレビや映画をはじめとする一連の映像コンテンツ作品の演出・表現に、なんらかの影響を及ぼす可能性もある。
http://biz-journal.jp/2013/08/post_2702.html

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