2015年4月21日火曜日

2000ミリ相当まで突き抜けた光学83倍ズームが笑うほど面白い――「COOLPIX P900」

これは色んな意味でモンスターですね。
月だけではなく、星座の撮影はどうだろうかは気になるところです。
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いやあ、これはすごい。ここまでスコーンと突き抜けられると、もう細かい事はどうでもよくなるというか、もう降参です、というか、一芸に秀でたどころじゃないムチャっぷりがたまらなく面白くなる。そんなカメラが出たのである。ニコンの「COOLPIX P900」だ。

【他の画像】

 一眼レフ風の少々ゴツくてでかいボディを持つ超高倍率ズーム機。まあそれは珍しくない。毎年、50倍とか60倍のズーム倍率を誇るコンパクトデジカメは各社から出てる。

 P900がすごいのは、毎年少しずつズーム倍率が増えてきた中で、「そんなちまちまやってられるか、うちは一気に行くぞ!」とばかりに望遠側を“どかん”と伸ばしてきたのである。もうシャレになってないレベル。何しろ、望遠端が35mm判フィルム換算で2000ミリになる。「2つめの大台」に乗ったのだ。ズーム倍率は83倍である。

 ここまでムチャなスペックをやられたらもう何をかいわんや。

●何はともあれ2000ミリ相当はスゴい

 正直、今までこの手の超高倍率ズーム機はあまり評価していなかったのだ。1200ミリとか1365ミリ相当といわれても、イメージセンサーは1/2.3型と大きくないし、レンズ的にも無理してるから画質的にも微妙だし、使い勝手もぎこちないし、ボディは大きいし、それだったら600ミリ相当止まりでもミラーレス機に望遠レンズを付けた方がいいじゃないかと思ってたわけである。

 でも2000ミリ相当まであると全然違う。ここまでシャレにならない倍率だと、それだけで笑っちゃうくらい面白いのだ。

 なにしろ、これが、

 こうである。

 動画で見るともっと面白い。

 83倍ともなるともう画質云々とは違う価値が出てきちゃう。何しろ肉眼ではよく見えないものでも撮れるのだ。

 レンズの明るさはF2.8からF6.5。この超高倍率で広角端でF2.8を確保し、2000ミリ相当でもF6.5にとどめてるのもよし。

 さすがにめいっぱい望遠にすると鏡胴もぐんと伸びて巨大なカメラになるが、まあその姿も悪くない。

 イメージセンサーが1/2.3型の1600万画素なので、ISO感度を上げるとディテールが怪しくなるのはしょうがない。オートではISO800まで上がる。マニュアルでは最高でISO6400だ。

 ボディは他社の廉価な高倍率ズーム機に比べるとしっかり作ってあり、けっこう剛性感があってグリップ感もよいし、アイセンサーを使ったEVFと背面モニターの自動切り替えも搭載(低価格な超高倍率機ではアイセンサーを持たないものが多い)しているし、背面モニターはバリアングル式なので自由なアングルで撮れる。P900は「P」シリーズを名乗るだけある。

 ただEVFのクオリティはそれなりだ。

 操作系もよい。電子ダイヤルも背面のロータリーダイヤルも装備。グリップ感もしっかりあって、構えた感じもしっくりくる。せっかく2つもダイヤルがあるのに効率よく使えてない(マニュアル露出時以外は片方のダイヤルが空いちゃう)のは残念な点だ。

 ズームレバーもシャッター回りと鏡胴側面と2カ所にあり、使いやすい方を選べる。

 撮影モードはオートのほか、PASMの各マニュアル系モード、デジタルエフェクトモード、よくつかう夜景モードや風景モードは独立したモードに、さらにシーンモードが用意されている。

 特にシーンモードの「月」と「鳥」に注目だ。普通のカメラにはないモードだからね。P900は月と鳥を撮るカメラだといってるかのようだ。

●「月」モードで月を狙え!

 超望遠レンズを手にしたとき、どこにいても誰でも手軽に撮れる、しかも超望遠じゃないと面白くない被写体がある。「月」である。でも普通はわざわざ月を撮影するためだけの「月」モードなんて用意しないでしょ。

 もう月モードがあるだけでこのカメラは面白い。

 月モードがあれば、まあ当然雲がなくて月が見えてないとだめだけど、誰でも簡単に月を撮れるのだ。まず月モードにして、月を画面中央に捉える。

 そして中央に捉えたらOKボタンを押す。すると自動的に2000ミリ相当の最高倍率まで上がるのだ。

 月モードには月をどんな色で撮るかを5種類から選べる。今回はクールな月を撮ろうってことで、青くしてみた。

 ちなみに、月は手持ちでも簡単に撮れる。満月に近くて雲がないときは非常に明るいので、ISO100で1/250秒くらいでOKなのだ。P900はブレを確実にふせぐためか、ISO220で1/500秒となった。

 オートモードだけれども、さらにデジタルズームをめいっぱい効かして撮ってみたのがこちら。

 さすがに等倍表示をするとディテールがつぶれてるけど、手持ちでこれが撮れちゃうのは斬新だ。

●「鳥」モードでカワセミを撮れ

 「月」モードと並んで楽しいのが「鳥」モード。

 超望遠カメラを手にしたら撮ってみたい被写体の、「月」に続く第2位だ(わたしの脳内調べ)。そこで「鳥」モードである。「鳥」モードではOKボタンを押すと自動的に800ミリ相当にズーミングする。800ミリ相当で狙いをさだめ、必要な焦点距離にして撮りましょうということか。

 鳥を撮るときはなるべくシャッタースピードを速く、1/1000秒以上にしたいが、F6.5ではなかなか難しい。P900はちょこまか動き回る鳥よりは、遠くにいて止まってる鳥を撮る用と思っていい。

 まあ2000ミリ相当の望遠+P900のEVFでは、動いてる鳥を追うのも難しいしね。

 とはいえ、鳥もちょこまかと顔を動かしたり毛繕いしたりするので、連写モードで押さえておくのがよいだろう。

 さて空は曇ってきたけれども、いよいよカワセミ撮影である。カワセミがいそうな川沿いをぶらぶら散歩してたら対岸に発見。そっとカメラを構えて狙う。

 このときに役立つのが、側面にあるクイックバックズームボタン。2000ミリともなると、すぐ被写体を見失う。ちょっと動いただけでどこを撮ろうとしてたか分からなくなる。

 そのときこのボタンを押すと、押している間だけズームアウトするので、それで被写体を中央に捉えてからボタンを離せば、またしっかり中央に捉えられるのだ。このボタン、P900が最初というわけじゃないが、今回はじめて「この機能って役にたつんだな」と思った次第。

 ではカワセミでもう一度、どれだけ高倍率かを見てみよう。

 ここでOKボタンを押して800ミリ相当にする。鳥を捕捉するときにほどよい焦点距離だ。

 さらに2000ミリまで伸ばす。

 ここまで寄れました。

 ただ、連写時はバッファがいっぱいになるとしばらく撮影できなくなり、気をつけないとシャッターチャンスを逃す。そこは残念。

●GPSやWi-Fiも搭載

 ざっと楽しんだところでそれ以外のシーンモードも。

 ペットモードは「ペットの顔を検出すると自動撮影する」という技。正面を向いてくれていればけっこうちゃんと認識する。

 料理モードは月モードと同様色合いを選べるが、あまり色合いを選べても、とは思う。全体にもうちょっと明るめにし、白い皿を白くなるようホワイトバランスをしっかり合わせた上での微調整がしたかった。

 夜景モードは手持ち夜景と三脚夜景を選べる。手持ち夜景にするとシャッタースピードが早めになって手持ちでもブレずに撮れる。

 逆光モードではHDR撮影のオン/オフも指定できる。

 撮影機能以外では、Wi-FiとGPSの両方搭載もポイントが高い。

 Wi-FiはNFCを使った簡単な接続が可能(Android機の場合)。Wi-Fi接続した状態で、カメラ側で撮影することもできる。その場合、撮った端からスマホに写真が送られてくる感じ。

 GPSは写真に位置情報を付けるほか、ログ機能(log形式のファイルで保存される)や、POI機能も装備している。

 POIは「Point Of Interest」の略。位置情報と連動して、その近くにあるランドマークを表示してくれる。

●これだけ遊べてこの価格なら十分堪能できる

 なお、ボディサイズは、同社のエントリー向け一眼レフ「D5500」より高さも幅もデカい。重さも撮影時重量で約899グラム(つまり約900グラム!)と1/2.3型センサー搭載機としてはヘビー級だ。

 価格も他社の60倍ズーム機に比べるとちょっと高め。

 まあこのカメラを日常のスナップ用の持ち歩く人はいないわけで、やはり1000ミリ相当以上の超望遠写真を撮りたい人がターゲットであるから、無理に軽く小さくするよりは、ある程度しっかり構えて撮れるボディにしたのは正解だ。その辺を加味すると、このハイエンドコンデジに近い価格も安く見えてくる。

 バッテリーもUSB充電できる(microUSB端子なのでコンビニに売ってるケーブルでも……たぶん可)ので、撮影途中にバッテリーの残量が厳しくなってもモバイルバッテリーで対応できる。

 それにしても、2000ミリ相当はすごい。ここまで寄って撮れるとなると、普通のカメラとは別の楽しみ方が出てくる。月や鳥といった遠くのものを撮るのはもちろん、なんてことない風景も、2000ミリでぐわっと寄ると予想外のものが撮れたりするし、超望遠ならではの圧縮感を利用した描写も楽しめるわけで、なんともスゴいカメラでありました。

 ここまで突き抜けちゃうともう感嘆しかありません。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150420-00000017-it_camera-prod

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