2015年7月7日火曜日

“Wi-Fiが付いただけ”と思ったら大違い――リコーイメージング「GR II」

 GRファンにとっての待望の後継機種です。
 価格.comでは、「最安価格(税込):¥89,910」となっているので、買うにはかなり迷うものでもあります。

 リコーイメージングから「GR II」が出た。前モデルのGRが2013年春発売なので、ちょうど2年。長いようだがGR的には通常進行だ。

 2005年の初代「GR Digital」発売以来、約2年ごとに新製品というペースが守られている。なかなかすごいことである。

 すごいといえば、GRの変わらなさ、というかブレなさ。

 そもそも28ミリ単焦点レンズを持つハイエンドのコンパクトカメラとして「GR1」が登場したのが1996年。2005年になって28ミリ相当のレンズを持つハイエンド機「GR Digital」がGR1シリーズを受け継ぐデザインコンセプトを持って登場。以来、基本デザインやコンセプトを変えることなく2015年まで来たのである。

 手元に初代GR Digitalがあるので並べてみたが、10年の歳月やセンサーの大型化を経てなおこのそっくりっぷり。

 この変わらなさは特筆に値する。

 逆に言えば、APS-Cサイズという大型センサーを持ちながらこのコンパクトさ。同じサイズのセンサーを持つ富士フイルムの「X100T」やシグマの「dp1 Quattro」に比べると圧倒的に小さい。小さくて薄いのに撮りやすくて写りもいい、というのがGRの一番の良さだ。薄いけど安定したグリップというこの絶妙な形状がずっと受け継がれているのである。

 では前モデルのGRから2年経てどう進化したのか。

●GRとGR II

 GR(2013年発売)とGR II(2015年発売)を並べて見たのがこちら。ち、違いがわからねー。

 正面から見ると少し違いが分かる。

 アクセサリーシューのあたりがほんのちょっと盛り上がってる。見た目の違いは(厳密に言えばまだあるけど)、おおむねここ。

 ハードウエア的には「Wi-FiとNFCが搭載された」。それだけといって過言ではない感じ。

 センサーはAPS-Cサイズの1600万画素。最近、このサイズのセンサーは2400万画素が主流になっているが、そこは変えてこなかった。 レンズは28mm相当でF2.8。伝統のスペックだ。

 写りはGRと同じ……であるが、オートホワイトバランスに大きな修正が加えられているという。どう違うのか。

 肌色、曇天下、室内、夜とAWBによる差がでやすいシチュエーションで比べてみた。

 色だけを見ればいいので分かりやすいよう縮小した画像で上下に並べてある。ホワイトバランスは「マルチパターンAUTO」。

 曇天下では青みが強くでがちなのだけど、それを抑えてるし、室内でもホワイトバランスを強くあわせすぎず、雰囲気を残してる。

 夜のお祭りの提灯を写したカットを見るとロコツ。当然提灯は色温度が低くて赤みが強い照明を中に入れてる。素直にそれを直しにいくとGRのようになる。

 いやはやけっこうな違いですな。予想以上に違った。

 個人的には、昔からGRは青空や緑を撮るときは極めていい色を出すけど、室内や曇天下にはあまり向かないというイメージがあったのだけれども、それも考え直す必要がありそうである。

 ついでに、高感度時の絵はどうなったかなと思ってISO3200で比べてみた。同じカットの照明が当たっている箇所と日陰になってる箇所の2カ所でチェック。

 まったく同じセッティングで撮ったつもりなのだけど(そのはず)、ホワイトバランスも微妙に違うし、暗部の処理もGR IIの方がいい。かなりいい。

 もし、GRとGR IIの差は「Wi-Fiだけ」と思ってる人がいたら、ちょっと考え直した方がよいかも。

 というわけで、基本スペックはGRもGR IIも同じで、ISO感度はISO100から最高25600まで、シャッタースピードも1/4000秒から、撮影最短距離もマクロモード時にレンズ前10センチと同じなのだが、写りは微妙に違っているのであった。

 ついでに細かい違いがちょこちょことある。

 GRよりGR IIの方が操作系のカスタマイズの幅が広いとか、GRは35ミリ相当のクロップモードを持ってたけどGR IIは35ミリに加えてさらに47ミリ相当と画角を狭くした設定もできる。

 側面のボタンを押すだけでかけられるデジタルエフェクトに「雅」や「かすか」、HDR調など新しいフィルタが加わった。「雅」はペンタックスユーザーにはお馴染みのもの。「かすか」はペンタックスの「ほのか」に似ている。

●GR IIはWi-Fiは搭載したけど、基本はスナップカメラ

 そしてGR IIが新しく搭載したWi-Fi。

 側面のエフェクトボタンを長押しするとWi-Fiがオンになり、他の機器からリモート操作が可能になる。

 ユニークなのは、専用のアプリではなく、Webアプリ「GR Remote」から操作すること。アプリをダウンロードしてこなくてもいいし、機種やOSの制限もない。

 PCだろうがスマホだろうが、専用のサイトからWebアプリを呼び出し(ブックマークしておけばすぐ呼べる)、Wi-FiでGR IIにつなぐだけでOK。

 Webアプリなので機種を問わずに使えるのが面白い(ただし、全OS、全ブラウザで試したわけではない)。

●クオリティと携帯性のバランスが最高なスナップカメラ

 さてGRとGR IIの違いを見てきたわけだが、最後に、GRをよく知らない人にちょろっと概要を。

 GRはAPS-Cサイズセンサー+広角単焦点レンズのハイエンドコンデジ。小さくて薄いけれどもグリップ感はよくて構えやすいし、グリップに電子ダイヤルを持っていて操作もしやすい。

 ハイエンド機だけあって操作系や絵作りのカスタマイズも豊富で、自分好みの操作、自分好みの絵を作ることができる。

 ペンタックスゆずりのTAvモード(絞りとシャッタースピードを設定するとISO感度が自動で設定される。マニュアル露出+ISOオート的な感じ)、シャッターを一気に押し込むとあらかじめ設定した距離で瞬時に撮ってくれる「フルプレススナップ」機能、さらにAF機能切り替えレバーとAFロックボタンなどスナップシューティングに向いた機能も搭載。撮りたいときにさっと撮れる。NDフィルター内蔵、インターバル合成、ワイコンで21mm相当の広角撮影にも対応など幅広く使える。

 要するに、プログラムオートや絞り優先でさっとスナップを撮るのにも使えるし、じっくりセッティングをして凝った撮影をするのにも使えるし、それでいて日常的に持ち歩けるし、APS-Cサイズセンサーならではの高画質を楽しめるという秀逸なカメラだ。

 となると、GRかGR IIかとなるんだが、ホワイトバランスをマニュアルでセットしたりRAWで撮るのならGRでいいと思うし、屋内屋外問わずJPEGでスナップを撮りたいのならGR IIがいいかと思う。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150707-00000020-it_camera-prod

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